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「温熱・省エネ設計」の勉強会に参加しました。-2020年省エネ基準義務化問題
2017.11.05更新 / 今日のすま研
先日、兵庫県建築士会神戸支部が主宰する「温熱・省エネ設計」の勉強会に参加しました。
温度が同じでも暑く感じたり寒く感じたりするのはなぜか。
壁の中の結露がなぜ起こり、どうすれば防げるのか、などなど、
建物の耐久性や住み手の健康に関わるという意味で、温熱環境は構造と並んで大事な分野です。
2020年に省エネに関する法律が変わり、省エネ基準が義務化されます。
家の中が快適温度で、電気やガスの利用は少ない方がいいよねという話には賛成なんですが、義務化には反対です。
選択の自由がほしいじゃないですか。
断熱のない木組みの家に、薪ストーブを入れて間伐材でまかなうんだ。とか
伝統的な土壁の家で、風通しよく暮らすんだ。とかが許されなくなります。
しかも、この省エネ基準の計算方法では、
モデル家族とモデル住宅が仮定されていて、その家族が一年に使うエネルギーの量が基準値になっています。
それを上回らないように建物の仕様を決めたり設備機器を選んだりするのですが
そのモデル家族とは、会社員の夫・専業主婦の妻・こども2人。
モデル住宅は木造2階建の3LDK、120㎡。
えらく偏ったモデルじゃないですか!?
これを標準にして、法律決めるって!?
多様な価値観によるいろんな暮らしのあり方はどうなってしまうのでしょう。
大手ハウスメーカーはすでに、高性能の冷暖房機器、給湯機器、換気設備、サッシなどの高性能な設備商品をまとったゼロエネルギー住宅を謳い売り出しています。
そこには地域の特性を読み、家族の価値観にあった暮らしかたを読み、それにあったすまいを提案する
というパッシブデザインの考え方がみられません。
今回の講習には、岐阜県立森林文化アカデミーの辻 充孝さんが講師に来られ
パッシブデザインを考えれば、自ずと省エネ基準はクリアできるという話をしてくださいました。
住宅が商品として売られ、多くの人も商品を選ぶように家を探すようになると、
その品揃えが画一的になっていきます。
たとえば、車を買うように家を買う感覚ですね。
でも、家って車のようにはいかないと思うのです。
家族が暮らす家には、単なるシェルター以上の影響力があります。
心にも、体にも。
それは家の床の素材であったり、色だったり、空間のつながり方だったり。
それがそのまま、その家族の素材になり、色になり、つながり方になる。
そんな感覚です。
画一的なすまいに暮らす人が増え、あたかもそれが住宅のスタンダードだと錯覚してしまうのは
本当にもったいないことだと思います。
暮らしによりそうすまいは、考える余地がたくさんあって悩ましくもあり、自由で面白いものです。
昨年は温熱環境について多角的方向から理解を深める一般社団法人エコハウス研究会の研修を通して、
すまいの温熱環境のことを考えてきました。
今後も、興味を持って情報を集め、クライアントのすまい作りに役立てていきたいと思っています。
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