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長屋の切離しと構造補強
2020.06.16更新 / 今日のすま研
長屋の耐震改修設計です。
長屋というのはひとつの建物にいくつかの住戸が横に並んでいる建物です。
この物件では2連棟の長屋を切離し、残された部分の耐震補強とリノベーションを計画しています。
切離し工事にあたり、先行して補強が必要な部分の補強工事に立ち会いました。
切離しをする際には、同じ長屋の他の所有者に同意を得ることが必要です。
同意の条件は法律で決まっているわけではありません。相談と交渉で決まります。
同意書を交わさず、口約束でやってしまうケースもありますが、お互いのために
よく話し合って書類に残すことをおすすめします。
今回の同意の主な条件は
・切離すことで外部に露出することになる壁は、雨が入り込まないように処理し、外壁材で仕上げをする。
・瓦屋根の切離し部は金属板で包んで雨が入らないようにする。
・切離しによって機能しなくなる構造に関わる部材は補強をして元の役割を果たすようにする。
例えば、屋根を支えている部材に母屋<もや>というものがあります。
長屋のように横に長い建物で材料の長さが足りない場合は途中で継ぎ目ができます。
その継ぎ目と切離しの位置によっては母屋は支えを失ってしまうことがあります。
今回は支えを失う母屋を下から支えるための梁と束を新設してから切り離し工事に取り掛かります。
今回は切り離し後に残る建物の改修に関わっていますが、別の物件では切り離しをお願いする立場のクライアントの相談も引き受けています。両方の立場に立つとよくわかりますが、切り離す側、切り離される側どちらの立場もそれぞれ守りたいものがあります。
切り離しの申し出を受ける側に立つと、建物には少なからず悪い影響が考えられるし、そのことによって思わぬ出費が必要になるのではないかという不安があります。
切り離しを申し出る立場の方は、相手にはそういった不安があることと、相手には必ずしも同意をする義務がないということを理解しておくといいかもしれません。
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