読みもの

フォークの定番

2026.05.19更新 /

ディナー、フィッシュ、パスタ、サラダ、デザート、ケーキ、ヒメ。
みなフォークの種類である。

今日は暮らしの道具としてフォークに焦点を当て、使い方に合わせたフォークの選び方についてじっくり考えてみたい。

フォークの3大用途は「切る」「刺す」「すくう」だが、
僕のように一日3回は箸を手にするものにとって、ほとんどのことは箸でこと足りてしまう。

しかし、食べることはただ腹を満たすための行為ではない。
誰と何処で食べるのかによってその意味が変わる。
時には演出が必要なのである。

ソーサーの上のカップに紅茶が注がれ、白く光る平皿の上には季節のフルーツが添えられたケーキ。
美しい藍色のソースが弧を描いている。
その手前には、つまようじが入っていますと書かれた紙に入ったわりばしが一膳、、、

ここはフォークやろ。

明治時代にフォークが日本にやってきて150年以上。
僕たちはTPOに合わせて「ここはフォークやろ。」と言えるほどにフォークを使いこなしている。

くらし研究室が運営するシェアキッチン&スペース|あべのながや六では出店者の方が使える備品として、パスタ用とケーキ用、大小2種類のフォークを用意している。

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先日小さいほうのフォークを買い足した。
長さ12.5センチ、ヒメフォークと呼ばれる小さなフォークだ。

ケーキやデザート用ならもう少し大きいものがいい。
しかし僕はヒメフォークを選んだ。
なぜか。
ヒメフォークのかわいらしいサイズ感が好きなのだ。
好みである。

焼き菓子を出す店も多い。
皿の上でケーキを切るためには左端の刃が他の刃よりも幅広くなったケーキフォークがよさそうだ。
しかし僕はヒメフォークを選んだ。
なぜか。
刃先のディテールがない分、先の部分がすっきりとし、持ち手から刃先までが一様に滑らかで、かつ左右対称に並ぶ刃のバランスが美しいからだ。
これも好みである。

刃の数はどうだろう。
四つ叉か、三つ叉か、意見が分かれるが三叉を選んだ。
なぜか。
三種の神器の3、構造的に安定した形である三角形の3、スティーブ・ジョブズが好んで使ったマジックナンバーの3。
僕は3が好きだ。
ああ。
これもまた好みである。

もはや理屈じゃない。
ケーキをヒメフォークで食べたっていいじゃないか。
刃が少ないことで刺した時の保持力が弱くなったって、4より3が好きなんだよ。
最後は見た目だ。
なにかを美しいと感じるために生きてるんだ。


ここから一歩も通さない
理屈も法律も通さない
誰の声も届かない
友達や恋人も入れない

「月の爆撃機(1993)」THE BLUE HEARTS


迷わず進むぜ。
あべろくのフォーク(小)はヒメフォークで決まりだ!
出店者さんにデザートフォークがいいと言われたってヒメフォークを買ってやるぜ!



自分のことを合理的な人間だと思っていた。
数字やデータを客観的に見て、ものごとを冷静に判断できるホモサピエンスだと思っていた。
合理的に考え、理論的に考察し、いっさいの私情を挟まずに理路整然とフォークの選び方を述べるつもりで書き始めたのにどうだ、
好きという心の叫びだけを嬉々として打ち込んでいる。

直感を言語化するって難しいよね。
なんせまだ言葉になってないんだから。

ところで、月の爆撃機の歌詞に出てくる「僕」は意気揚々と自信に満ちて伝説の爆撃機で出撃するものの、進むべき道を照らす光は弱い。
このまま進んで大丈夫かという自分自身の声に、いいや行けるさ、目指す場所は決まってるんだと言ってみせるがどこか不安げだ。
理屈も法律も通用しないぜと強がるも、友達も恋人も近寄れず、誰の声も届かないコクピットの中にいる「僕」は孤独である。
地上から見ているもうひとりの僕は、お前が乗っている伝説の爆撃機なんて幻なんじゃないのかと言う。

この歌が発表されたのは結成から8年目で、解散の2年前だ。
この時既に伝説のロックバンドと言われていたザ・ブルーハーツの甲本ヒロトさんはもしかすると自らの孤独と不安を歌ったのだろうか。

自分の中に感じられる確かな光は例え薄い月明りだとしても、俺は前に進むんだという覚悟と気概を感じて、僕は力をもらっている。