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エアコンを畳数で選んだらオーバースペックになる話
2024.07.09更新 / 今日のすま研
工事が終わった後、エアコンの本体をクライアントが購入するケースがある。
部屋の大きさを基準にしてエアコンを選ぶとオーバースペックになってしまうことが多い。
今回エアコンを設置するのは部屋は鉄骨造2階建ての2階に作った45㎡の部屋だ。
畳数で言えば28畳だ。畳数で選ぶと家庭用で一番パワーのあるクラスになる。
例えば、29畳用、冷房能力9.0kw、暖房能力10.6kw、低温時暖房能力9.4kwとなる。
ネットで調べた価格だと約40万円だ。
では必要能力を計算するとどのくらいなるかというと、冷房能力が4.7kw以上、低温時暖房能力3.5kw以上となる。
この能力を持つ機種をネットで調べると約12万円だった。
ずいぶん違う。
さて、いったい何を計算するか。
建物に出入りする熱量を計算する。
建物には主に木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造がある。
同じ広さでも構造によって暑さ寒さの環境が異なる。
具体的には断熱がどの程度か、窓ガラスの種類、窓の大きさと箇所数、天井が高い、吹抜けがある、建っている場所の違いなどで違いが出てくる。
スペックによって入ってくる熱と出ていく熱の量が違うので、その量を算出して必要なエアコンの能力を決める。
例えば夏、窓からは太陽の光が入ってきて部屋を暑くする。
窓が大きいほど入ってくる熱量は多い。
窓の方角によって日射熱の量が違うので係数で調整する。
ガラスの種類や庇のありなし、日射を遮るルーバーやブラインドがあればその遮蔽効果も考慮して計算する。
それらを考慮して、外気温33度の時に室内気温を25度にする場合に必要な仕事量(ワット)を計算する。
熱は窓だけでなく屋根や壁からも入ってくる。
断熱性の高い断熱材がたくさん入っていればそれだけ外から入ってくる熱は少なく温まった空気も冷めにくい。
冬も夏と同じ要領で計算する。
例えば外が0度の時、部屋を23度にしたいとする。その差23度。
温度差で比べると夏より冬のほうがしんどいが冬の場合、日射熱はエアコンにとって助っ人となる。
今施工中の物件がある南丹市は降雪があり気温の低い日が多い。
そういった地域差も計算の中で調整する。
そうして出した数字で選んだエアコンは面積から選んだものよりたいがい低い冷暖房能力のものでこと足りる。
販売店は大きいエアコンを売りたい。
「畳数を基本に選んで、さらにワンランク上の機種を選ぶと安心です」などと言ってみたりする。
もちろん熱負荷計算などしない。
ちなみにエアコンの畳数の基準は1960年代の木造住宅を基準にして決められたものらしい。
60年以上前の木造住宅と言えば断熱材はなく、今と比べ物にならないくらい隙間も多い。
その基準が今でも使われている。
以上、エアコンを畳数で選んだらオーバースペックになる話でした。
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