事例集

井上さんのすまい(2015) -SOHOとバリアフリー- マンションリノベーション 

2015.12.22更新 /

竣工|2015年
場所|大阪府吹田市
用途|個人住宅(マンション)
工事種別|内部改修工事、リノベーション
構造|鉄筋コンクリート造
規模|専有面積 約73㎡
施工|株式会社やまはた

大阪のすまい力アップ 第4回リフォーム・リノベーションコンクールにて特別賞を受賞しました。

*homify(ドイツ発信の建築デザインオンラインマガジン)で特集されました。
築35年の家をバリアフリーリフォームで不便さを解消した住まい(日本)
Before and After: The dramatic rebirth of a Japanese home(ドイツ)
35년 묵은 집의 새로운 탄생, 아파트 인테리어 리모델링(韓国)

築40年のマンションをリノベーションしました。
施主のIさんご夫婦がこの住戸を購入してから35年。子供が生まれ、その子たちも大きくなり、現在は下肢に障害を持つ娘さんとの3人暮らしです。
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before:35年間の思い出が詰まった部屋
DSC_0922-20150603web ▲壁の落書き、ポスターを貼った後、子供部屋の名残。35年ですから、いろんなことがありましたよ、きっと。すまい研究室がリノベーションにあたって考えるのは、また何十年後かに全てを壊して作り直したいと思われないように作る、ということです。

before:狭くて介助がしづらい玄関
DSC_0925-20150603web ▲娘さんは外では車椅子、家では抱えられて移動するということで、玄関や風呂場まわりの狭さが問題でした。
さらに玄関は内開きです。内開きにしては土間の奥行きが十分でなく、使いづらさを助長していました。

before:頭がぶつかるキッチン
DSC_0873web ▲キッチンの吊り戸棚の背面に梁(構造体の一部)がありました。
ここまで出っ張っているので、洗い物をすると頭がぶつかって使いづらい設計になっていました。

before:小さく分断された部屋
DSC_0911web ▲多少小さくても部屋数をとるのが、この頃の住宅の主流でした。

さて、ここからは改修後の様子です。
まず始めに、玄関の使い勝手を改善することを考えました。

after:土間を広く、介助しやすい玄関に。
玄関(1) 20151119web ▲手前に向かって緩やかな勾配をつけています。将来、手すりをつけるための下穴もあけています。

after:狭さを感じない2畳間
DSC_0975web ▲打合せのとき「お父さん、この部屋2畳だって…」と驚きと不安を隠せなかった奥さんの表情が忘れられません。玄関が広くなって、しわ寄せをくったのがこの2畳間ですが、すまい研究室の狭さを感じさせんとする工夫の甲斐あって、完成後の評判は良好です。

after:洗面室の扉は引き戸に。排水管は露出させて。
玄関(2) 20151119web ▲娘さんを抱えて通る洗面室への動線は、介助しやすいように広く、扉は引き戸に。引き戸は、ラワン合板という素朴な材料に柿渋を塗って表情をつけています。
で右に見えている配管は、排水管です。以前は壁の中に隠されていましたが、できるだけスペースを取るために露出させました。そのかわり、麻縄を巻いて触りたくなるように仕上げています。

after:シンプルな洗面台
DSC_1047web ▲洗面台まわりもコンパクトにまとめ、なるべく介助スペースをとれるように。

after:柿渋塗りの浴室用スロープ
DSC_0243web ▲現場監督が作った、浴室用スロープです。建具と同じ柿渋塗仕上げ。床はコルクタイルです。

after:引き戸、引き戸、引き戸。
DSC_0979web ▲右手奥にみえる扉はLDKへ通ずる引き戸で、車椅子に対応して幅を1mにしています。
枠に掘り込みをいれて、閉めたときに建具がはまり込むようにしているのと、建具の底につけた毛束で床との隙間をふさいで、隙間風を軽減しています。

after:無垢の床
DSC_0971web ▲床はパイン材のオイルフィニッシュ。
床で寝そべって過ごすことの多い娘さんのためにも、無垢の床材と健康に配慮した仕上げはたっての希望でした。

after:風の道をつくる
2畳竹簾を見るweb ▲夏は風通しをよくして過ごしたいということで、襖の開閉で通風を調節できる地袋(じぶくろ:足元に作る収納。天井近くに作るものを天袋といいます。)を作りました。手前側は押入れ、向こう側にはクローゼット収納があります。

after:押入れと、風を通す地袋
押入れと地袋 20151119web ▲うちの子どもたちがお邪魔したときには格好の遊び場と化していました。

after:明るいキッチンに
台所 20151119web ▲キッチンは既製品と家具工事で作った吊り戸を組み合わせています。もちろん頭をうたないように。

after:ブルーノ・マットソンの家具
DSC_1030web ▲思い切って家具もそろえたいということで、天童木工のショールームにお供して選びました。
ブルーノ・マットソンがデザインしたチェアテーブルによるダイニングセット。同じく、ブルーノ・マットソンデザインの格別座り心地のいいイージーチェア(記載はハイバックチェア)。

after:広々としたLDK
DSC_1020web ▲LDKとその隣にある和室は襖でしきります。
欄間部分をすかして目線を通すことで閉塞感を感じないように。
暖房の効きを心配されていましたが、ベランダの窓の断熱性を改善するために設置したインナーサッシの効果もあって、基本的にはオイルヒーターだけ。よほど寒ければエアコンを使って快適に過ごされているとのことです。一安心。

after:ワークスペース
DSC_1002web ▲自宅で仕事をされているご主人のためのワークスペース。
スキャナーやプリンターの設置スペースと本棚を用意。その下は通風地袋になっています。

after:麻縄を巻いた排水管
DSC_0248web ▲細かいところに目を向けて。こちらは排水管に麻縄を巻いたものです。
普通は壁で囲って隠してしまいますが、今回は居間から風呂場までの動線の途中にあって、少しでも有効な通路幅をとりましょうということで壁で囲わず、かつ触れてもいいように、というより触れたくなるような素材で仕上げました。
トイレにもある排水管。現場監督が夜遅くまでかかって巻き巻きしていたところへIさんご夫婦が夜食を差入れに訪れ、また設計者がややこしいことさせとるんかいなと連帯感を強くされたとかで。いない人をネタに盛り上がるのは世の常で。(ただし、それは正しい認識ではありませんよ)

after:安い材料を丁寧に使う
柿渋塗りの建具 20151119web ▲建具は主にラワン合板を使っています。ラワンと言ってもいろいろ表情があるので工場に行って選びました。
建具以外で使っている木材と色味が合うように柿渋塗料で色をつけて仕上げました。引手には襖で使う木製のものを使って。

after:全くの別空間に生まれ変わりました
DSC_1065web 工事が終わった際には完成内覧会もさせて頂き、意外なほどの盛況で、Iさんご夫婦も楽しそうに家の中を説明されていました。
その時の様子はコチラ

2015年12月末、追加で制作したテレビ台の仕上げにお邪魔したときは、以前からあった写真や絵が本棚に飾られていたり、ほうきとはたきが壁に掛かっていたりと、少しづつ生活の色が出ていてとてもいい雰囲気でした。